筑前琵琶

琵琶について
琵琶は古代ペルシャ文明を発祥とし、7-8世紀頃に中国から日本に伝わり、奈良東大寺の正倉院の宝物として伝来当時の琵琶や楽譜が遺されている。現存する世界最古の四弦琵琶は、今のところこの正倉院に保存されている、奈良時代の数面の琵琶であるとされている。その後、日本では 五弦琵琶、楽琵琶、平家琵琶、盲僧琵琶、唐琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶などの流派に発展し、それぞれの楽器は特有の音楽を持っている。また、琵琶を主体とした音楽を「琵琶楽」と総称する。

筑前琵琶について
筑前琵琶は、明治の中期に初代 橘旭翁(たちばな きょくおう)が薩摩で薩摩琵琶を研究して帰り、新しい琵琶音楽として作り出された。明治29年(1896)に橘旭翁が東京へ進出し演奏活動を開始して注目を浴びた。筑前琵琶の音楽は薩摩琵琶に比べ曲風が全体的におだやかであり、楽器、撥ともやや小ぶりで、胴の表板は桐に変わり、音色は薩摩琵琶に比べて軟らかい。筑前琵琶の音楽には三味線音楽の要素が取り入れられており、歌いながら琵琶の伴奏を入れる部分がある。著名な曲としては「湖水渡」「道灌」「義士の本懐」「敦盛」「本能寺」「石堂丸」などがある。筑前琵琶の種類は四絃と、四絃より音域をより豊かにする為に初代橘旭翁とその実子である立花旭宗一世によって考案された五絃があり、五絃の方が全体にやや大きい。撥も五絃用のものの方がやや開きの幅が広く、いくらか薩摩のものに近い。柱はいずれも五柱(四絃五柱、五絃五柱)。